有機&自然栽培と養鶏を組み合わせた営農スタイルを貫きながら
自給自足の生活を目指している里奏園の寄元和浩さん。
その畑で収穫してもらった夏野菜と平飼いの卵、
そして親鶏を解体した肉を使って
井上さんのスパイス料理がスタートした。
文・写真=坂田圭介


井上よしおさん=旅する料理人(旅するクーネル/三瀬スパイス研究所)
福岡の大名で、10年間ワイン食堂「食堂クーネル」を営んだ後、1年間の世界一周旅行へ。帰国後、佐賀県三瀬村に移住し、カレーの移動販売を始める。現在は、スパイス料理の教室や講師としても活躍中。



いよいよ調理スタート

 料理人としての長年のキャリアがあるからだろうが、井上さんの料理はすこぶる早い。頭の中で事前に描いていた料理の手順をトレースしているのか、あるいは体が料理を憶えてしまっているのか。しかし、その井上さんの動きが一瞬止まるときがある。味見をした後だ。少し上を見上げるような仕草で、高速回転で次の一手を考えている棋士のような表情になる。味を作っていくというのは、そういうことなんだろうと妙に納得してみる。
それにしても、井上さんはよく味見をする。しかも、大量に口に入れる。井上さんは料理完成後の試食の際、ほとんど口にしない。「普段からあまり食べないんで」とか言っているが、あれだけ味見で食べていれば、試食もできないはずだと心の中で思っている。

料理をしている時の真剣な表情が何とも格好いいです、井上さん!

旬の夏野菜と卵、鶏肉は何に変身するのか

さて、今回の食材は寄元さんが作った夏野菜と卵、それと鶏肉だ。当然、一品はカレー。鶏肉を使ったドライなカレーだ。
卵料理は「インディアンオムレツ」。夏野菜がたっぷり入った一品だ。付け合わせは、ラオスのスパイシーなサラダ。酸っぱくて、辛くて、少々甘いのが特徴。いずれもスパイスたっぷりで、夏の暑さを吹き飛ばしてくれそう。料理をしながらの会話を交えて、レシピを紹介しよう。


チキンペッパーフライ(ドライなカリー)

■材料
(A)
鶏もも肉 一枚
ブラックペッパーパウダー 大さじ1
チリパウダー 小さじ1
ターメリックパウダー小 さじ1
ガラムマサラ 小さじ1
コリアンダーパウダー 大さじ2
(Aここまで)
にんにく 2個
しょうが 1かけ
塩 小さじ1


たまねぎ 1個
トマト 1個
油 大さじ4
レモン汁 1/2
水 200CC
パクチー お好みの量


[ホールスパイス]
マスタードシード 小さじ1
フェンネルシード 小さじ1/2
チリホール 4本
ブラックペッパーホール 小さじ1

■作り方
①材料Aを全て混ぜ合わせ、玉ねぎはスライス、トマトはザク切り、ニンニクと生姜をすりおろしておく。
②フライパンに油を熱してマスタードシードを加えて弾けたら他のホールスパイスを加えて香りを出す。
③フライパンに玉ねぎを加えてしんなりするまで炒めたら、トマトをざっくり炒め合わせる。
④材料Aとにんにく、しょうが、塩を加えて軽く炒めたら、ひたひたになる様に水を加え、 鶏肉が好みのかたさになる様に煮込んで水を飛ばしていく。
⑤ドライな感じになったらレモン汁を加えて塩味をみて更に盛り付けパクチーを散らし完成。


■大変ならばホールスパイスが無くても十分美味しいです! スパイスは全て揃わなくてもそれはそれで良いと思うし、そこを面白がれる所が料理の醍醐味と思ってます! 全て混ぜ合わせて玉ねぎなど炒めなくても美味しいから、是非是非作ってみてください。ブラックペッパーを効かせるのがコツです!(by 井上)

土地とともに生きる覚悟

井上 自給自足を実践してらっしゃるのはすごいなぁ。
寄元 鶏は最初10羽くらいから飼い始めて、米も始めて。野菜もいろいろ作って。基本は自給のためです。調味料もやりたかったので、醤油や味噌も手作り。黒砂糖も、自分でサトウキビを栽培して、搾って。気持ちとしては何でも全部やりたいんですよ、昔から。
井上 ワークショップなんかもやってらっしゃいますよね。
寄元 ワークショップでは、こんにゃく、味噌、醤油、鶏の解体などをやっています。今の楽しみは、どぶろくとブドウのジュースワイン。今ブドウの苗を育てているところです。どぶろくは美味しいですよ。普通の酒は火入れをしてありますが、自分で作ると生だから体にいいんですよ。ワインも生で。
井上 そこまでやったら、もう一生安泰ですねえ。
寄元 元手がゼロというのがいいと思うんです。
井上 なかなか、そこまでやろうと思ってもできないですよね。
寄元 覚悟を決める必要はありますね。
井上 地域の人との関係もあるでしょう。
寄元 ここに来て20年になるので、いろいろ役とかもやりましたよ。
井上 その土地とともに生きる覚悟ですね。


インディアンオムレツ

(20cm型のフライパンの大きさ)

■材料
卵 6個
トマト 1個
ナス 1本
ズッキーニ 1本
たまねぎ 1個
パプリカ 1個
塩 小さじ1/2
クミンシード 小さじ1
ターメリック 小さじ1/2
チリパウダー 小さじ1
ニンニク みじん2個
良い油


ソース
ケチャップ 大さじ6
チリパウダー お好みの量
ガラムマサラ 小さじ1


■作り方
①卵をボール等に良く混ぜ、野菜を適当な大きさにカットする。ソースの材料を混ぜ合わす。
②フライパンに油を熱し、クミンシードを弾かせてからニンニクを加える。香りが出たら、トマト以外の野菜とパウダースパイスを加えて甘味が出るように炒める。
③卵液の中に炒めた野菜を加えてよくまぜ、再びフライパンを熱して多めの油を加える。
④卵液を加えて中火で鍋底をこ削ぐように混ぜながら、スクランブルエッグ状になるまで混ぜ、弱火に落とししばしまつ。あれば蓋をする。
⑤何となく固まったら、お皿をフライパンに乗せてひっくり返す。裏側も色良く加熱したら、再びお皿を乗せて盛付け完成。


■ひっくり返すのが面倒くさかったらフライパンごとオープンオムレツもあり! 野菜を炒めるのが大変ならば、トマトなど生でも食べれる野菜や、ツナ缶、食べた残した肉ジャガやキンピラゴボウなど何でもいけますヨ!(by井上)

井上 福岡の大名でやってた店を売って、世界一周の旅に出たんですよ。食をテーマに、1年間。帰ってきて、さてどうしようという時に、できることは一つしかないなと。昔の店では、安いものを使って安い料理を出すこともしていたんです。でも今度は、自分の思いと提供する料理のつじつまが合うようにしたいと思ったんです。矛盾がないように。体ににいい食べ物ってなんだろうと思った時に、カレーに行き着いたわけです。
寄元 体にいい食べ物としてのスパイスカレーか…。
井上 スリランカの家庭料理はめちゃくちゃ美味しいですよ。カレーしかないですけど。でも、少しお金持ちの人にお願いしてカレーを作ってもらったんですが、最後に日本製の化学調味料を入れるんですよ。逆にお金持ちの人にとっては、ちょっと「なんか違うぜ」みたいな。遠回しに聞いたら、お金持ちは使うそうです。普通の人は買えないから。最近は中華の文化が入ってきているようですね。
寄元 現地ではスパイスはどうやって調達するんですか?
井上 結構、あちこちに生えてます。庭に必要なスパイスは全部生えている家もあります。結局、豊かなんですよね。バナナとか、食べ物はそこらへんに生えてますしね。だから人も穏やかなんやろな。


ラオスのスパイシーな鶏肉サラダ

(ラープガイ)

■材料
鶏むね肉 1枚
トマト 1個
たまねぎ 1/2 個
お好みのサラダ菜
ミント お好みの量
パクチー お好みの量
炒ったお米、またはナッツ等


タレ ナンプラー 大さじ2
レモン汁 大さじ2
きび砂糖 大さじ1
チリパウダー 小さじ1
ニンニク すりおろし2個


■作り方
①鶏肉を煮るか焼くか、お好みの加熱で調理して、食べやすくカットする。
②タレの材料をまぜあわせる。
③野菜とハーブをお好みにカットする。
④全て和えたら完成。


酸っぱくて辛くて少々甘くできたら成功です! パクチーはお好みで。ポイントはミントです。ネギやハーブをきかせるのもよいかも。肉は何でも良くお魚の刺し身も美味しい!

この日、井上さんが余った材料で作ってくれた一品。「もったいない」「全部使い切る」を何度も口にしていた

旅する料理人「有機野菜と卵でカレーとオムレツ編」を読む
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