［第2回］JR肥後大津駅小山駅長編

この物語は、九州の食卓セレクトショップから徒歩１分のJR肥後大津駅周辺にまつわる情報をスタッフが紹介していきます。
第一回目は肥後大津駅を通勤で利用するスタッフ大石が紹介します。
文・写真＝大石雄樹

肥後大津駅

「ご乗車お疲れ様でした。終点肥後大津駅です。お忘れ物の無いようご注意ください。」

このアナウンスが目覚まし代わりとなって、私の清々しい朝がはじまります。ここが終着駅でよかったと何度思ったことか。

そんなことを思いながら改札に向かうと、毎回、にこやかな笑顔で出迎えていただくのが駅長の小山真次さんです。

小山駅長とは、会社と駅が近いが故に、私が帰りの電車の発車ぎりぎりに会社を出て、毎回ドタバタ走って改札を通る姿を目撃されたり、「ほら、急ぎなさい！」と、時には注意を受けながら、終電間際の電車に間一髪乗せていただいたり、あとは奥様が「九州の食卓」を購読されていたご縁（大変ありがたいです。）もあって、改札を通るたびに気さくに声をかけていただくようになりました。

「栄えある１回目に登場ということで緊張しますね。」とにこやかに取材に応えていただきました。

小山駅長

　小山駅長は昭和53年に国鉄に入社し、旅行業務を長年担当した後に、３年前に肥後大津駅に赴任されました。

「入社当時からすると、世の中が変わったなと実感しますね。券売機もなく、線路変更も手動で行ったり、あと貨物列車なんかは、人が飛び乗って列車を止めたりしたり、各駅に駅員が20〜30人いたりとかね。今では考えられないことでしょう。まあ、かわりに今はパソコンの操作を覚えるのが大変だけどね。」と感慨深い様子。

肥後大津駅は大正3年にできて、当時は貨物輸送が中心だったそうです。
（ちなみに大津町の特産品からいも（さつまいも）の生産量が増えたのも駅ができてからで、鉄道のおかげで販路が拡大し、生産量が増えたと町の歴史文化伝承館に展示してある新聞に記載されていました。）

現在の肥後大津駅は1日平均5000人の方が利用しているそうで、JR九州が公表しているデータによると、九州の主要な路線である鹿児島本線の駅と比較しても利用客が多い方で、意外や意外、利用客が多い駅の一つでした。

「豊肥本線の周辺はまだまだ田んぼだらけで、家も立ちそうなので、まだまだ利用客は増えるんじゃないかな。」と予想する小山駅長。

構内アナウンス風の撮影も快く引き受けてくださいました

駅員は駅長を含め５名で、定期券や切符の販売を行う窓口、改札業務や列車の出迎え、送り出しを行っています。
木造の駅舎には乗務員用の仮眠室が３つも備えてありました。

駅員さんのお昼ごはん事情を聞いてみたところ、「私は毎回おいしい妻のお弁当です。」と小山駅長は前置きされつつ、基本的に駅員は、勤務体制がシフト制で一般的なお昼の休憩時間も日によって変わるので、外で食べることはほとんどないようです。代わりに町内の宅配お弁当屋さんを利用することが多く、月ごとに日替わりメニューが変わるので、重宝しているそうです。

利用客には、駅北口から旧道に向かう通り沿いにある定食屋さん「門出苑」さん、「きっちん榮楽」さんをよく紹介しているそうです。
　また最近は熊本空港を利用する方や、インバウンド向けに発売しているレールパス（周遊券）を利用した海外の観光客も少なくなく、列車の待ち時間に、旧道沿いの水車や上井出沿いのお寺を散策しに行かれる方も、ちらほらいるそうで、昔の風情が残る場所に駅から歩いて行けるのも、駅周辺の魅了の一つかもしれません。

駅の北口と南口は、通行許可書を窓口で受け取ると駅内を行き来することができるので、他の駅と比べて、列車を利用しない地元の方と接することも多く、よく年配の方と何気ない会話を楽しんだり、学生からよくあいさつもしてくれたりと、親しみやすい印象だそう。

最後にせっかくなので、駅長オススメの九州の鉄道の旅を聞いてみました。
「やっぱり観光列車。特に熊本は観光列車が多いので、どれもオススメですが、強いて言えば、熊本と鹿児島県吉松を結ぶ観光列車「いさぶろう・しんぺい」号がオススメですね。水戸岡鋭治氏がデザインした内装は木製の落ち着いた雰囲気を楽しめますし、日本三大車窓の一つでもあるえびの盆地と霧島連山のパノラマ風景は絶景です。駅弁と地元の球磨焼酎をいただく鉄道の旅を一度は体験してほしいですね。」とのこと。
これは一度乗らねばと思った次第です。

「お客様の安全を第一に」をモットーに残りの定年まで頑張りますと意気込みを語っていただきました。